ずくなしの気ままに 花・山

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2007年 02月 26日

冬の鳳凰山(後編)

12月30日(三日目)

7時少し前、たっぷりと眠って、すこぶる良い目覚め。
今日は下山のみ、慌てることも無い。ゆっくりと起きだして、用を足しに外へ出てみると、空は真っ青に晴れて素晴らしい天気だ。隣のテントのパーティーは早朝に出かけたのだろう、人の気配は無かった。「うーん、来るのが一日早かったかな?」この好天に登っていく人が少し羨ましい気もして「もう一度上まで登ってみようか・・・」などとも思ったが、あまりセコセコとする気にもなれず、のんびりと食事を作り食べながら、静かな山の朝を楽しむ。
去りがたい気持もあり、ゆっくりと撤収して、南御室小屋を後にしたのは10時少し前だった。

まずは苺平への登り返し、一昨日と比べると、トレースがしっかりと出来上がり、とても歩きやすい。f0076683_2193665.jpg苺平へ10時半、そのまま下ってしまったが、後で聞くところによると、ここから少し足を伸ばして辻山まで行くと、展望が素晴らしいらしい。天気が良かっただけに、下調べ不足が悔やまれる。
順調に下って山火事跡までもう少しと言う辺りから、年末年始を山で過ごそうと登ってくる人たちとすれ違い始めた。真っ青な空、時折富士山が真正面に姿を現す。山火事跡まで来ると、念願だった西側の展望が一気に開けた。
ザックを下ろし、カメラを出す。北岳・間の岳・農鳥、白峰三山が青空の下に真っ白く輝いていた。f0076683_2110914.jpg
風も無く暖かい。景色を眺めながら座り込み、パンをかじっている僕の脇を、次々と上へ向かう人が通り過ぎる。「いい天気ですね~」と声をかけていく人もいて、みな表情が明るい。ここから少し降ると雪もなくなってしまうと思うと去りがたいが、30分ほどで腰を上げ、11時20分下山再開。
f0076683_21104933.jpg
再び樹林帯に入り、しばらくすると雪が消え、登りのときと同様凍った道が現れた。その時に比べると、少し歩きやすくなっているようだが、アイゼンを出そうかどうしようかと迷いつつ歩く。それでもだいぶ下って、これから杖立峠への登り返しという辺り、道脇にザックがど~んと置かれて、持ち主は見えない。キジでも撃ってるのかなと思いつつしばらく歩いていくと、人が二人、屈みこんでなにやら切迫した様子。近くによってみると、「早くアイゼンを履けば良かった。」と言っていたが、一人が氷で足を滑らせ、転んだ拍子に足首をひねったらしい。既にテーピングをしていたが、ザックを置いた場所から担いだり、補助したりしながら歩いてきて、いよいよ動けなくなったようだ。「どうしますか?」と聞くと「助けを呼んで欲しい。」と言う。とりあえず手帳に名前などをメモしてもらい、位置・時間を確認して伝令に走ることにする。凍った道ももう少しで終わるところだが、念の為アイゼンを装着して、杖立峠への登り返しを行く。興奮してアドレナリンが出ているのだろう、普段ならとてもこんなペースでは登れないというようなテンポで登りきり、峠に着いたのが12時頃、少し下って凍りがほぼなくなったところでアイゼンを外す。念の為携帯電話を試してみると、アンテナが立った。生まれてはじめての110番通報、ドキドキしたが意外と冷静に話すことが出来て、とりあえずは一報を入れて一安心。しかし、まだ気を抜けない。夜叉神小屋まではまだ一時間近く掛かるはず、小走りにとは言っても、荷物を背負っているし、気はあせっても早歩き程度か、それでも全速力で下る。最後の登り返しをゼイゼイ息を切らせながら登って、小屋が見えたときは芯からホッとした。

午後1時、小屋へ駆け込み「すんませーん、上で捻挫した人が助けを待ってます~」と声をかけると、奥から小屋番さんが、ヌ~っと出てきた。
少々あせっている僕に対し、こういうことにも慣れているのだろう、動じる風も無い。メモから名前・住所などを確認し、場所や時間を聞き取ると、「ご苦労さん疲れたでしょう、これでも飲んでいて。」とコーヒーの缶を出してくれ、奥へ引っ込んだ。無線だろうか地元の遭対へ連絡を入れている様子「現地へ行って、また連絡します。」と言っているのが聞こえた。それからも淡々と準備をし「これからどうする?登りだったの?帰りだったの?」と聞いてくる。ここにいても手伝えることも無いだろうし、案内が必要な場所でもない。「帰りです。このまま下山します。」と言うと「じゃあ、気をつけてね。」と、相変わらずゆったりとした身のこなしで、特に急ぐ様子も無く歩いて行ったのが印象的だった。

f0076683_21111982.jpg僕にとっては一件落着、お役御免。かいた汗が冷えて、急に寒くなってきた。彼らに会ってから既に1時間半ほど、小屋番さんが現地に着くには、これからまだ2時間近く掛かるだろう。標高2000mの薄暗い冬の山道で、動けずに助けを待っている人達は、さぞ寒かろう切なかろうと思う。しかし、この場で何を思おうと、彼らにとってなんの助けにもならない。改めて周囲を見回すと、相変わらずの好天で白峰三山の眺めが素晴らしい。少し気が引けたが、カメラを出して写真に収め、夜叉神の森下山口に向かう。

f0076683_21113738.jpgそこからの降りは辛かった。先ほどまでの反動か、やけに荷が重く、脱力感で足が進まない。道が割合と緩やかなのが救いだが、それもだらだらと続くと辛い。結局登るのとほぼ同じ時間をかけて、やっとの思いで車に戻った。荷物を下ろし車に積み込むと、早々に麓の温泉に向かって車を出した。
湯に浸かると、体が芯から溶け出すような気がする。彼らは今頃どうしているだろう。小屋番さんとは出会えたのだろうか。たとえ出会えても、それからまだ長くてつらい道のりが待っている。それを思うと大いに後ろめたいが、湯船に身を伸ばして、今は無事帰り着いた安堵に身をゆだねる。     (終わり)
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by zukunasi_7 | 2007-02-26 21:17 |
2007年 02月 22日

冬の鳳凰山(中編)

12月29日(二日目)

さて、テントのなかが片付くと、まずやることは水つくり。1ℓ持って来ているので、今夜の食事分だけ作れば良い。ストーブを点けると、すぐにテントが暖かくなる。ホーっとする。雪が溶けていくのを眺めなら、何を考えるでもなくボーっとしていると、暖気で体に血が流れ出す。
そのまま湯を沸かし、野菜を放り込む。沸き立ってくると湯気でテントの中に霧が出来た。狭いテントの向こう側が霞むほどの濃い霧、面白いが、これはテントの内側に凍り付いて霜になるので具合が悪い。極力湯気を出さないようにする。今日のメニューは、水炊き。重い思いをして運んできた鶏肉や豆腐が上手い。持参の酒をちびりちびりやりながら、寒いテントの中でつつく鍋はバカウマ。まあ僕の登山は、こんな一時を楽しむために登ってくるようなものだ。最後に餅を放り込んで雑煮にする。
腹が満ちてしまえば後は寝るだけだが、今夜は冷え込みそうなので湯たんぽを作ることにした。残りの水を沸かしてポリタンに入れる。火器と食器を片付けてシュラフを広げる。狭い一人用テントの中では、シュラフにもぐりこむまでが一苦労。ラジオをつけたが入りが悪い、諦めて目をつぶった。

遠いどこかで、なにやら音がする。ボーっとした意識がだんだんハッキリしてきて、テントに風が当たる音だと気が付いた。「ン~何時だ?」手探りで時計を探す。なんとまだ0時半「参ったなぁ」変な時間に目が覚めてしまった。外は風が強そう「稜線上で吹かれたらいやだなぁ~」などと、なんとなく考え出したら眠れない。明日の行程を思い浮かべる。昨日会った人の話を思い出し、ワカンが無いのも気掛かり。「砂払いまで3時間か~観音岳まで行けたら御の字かな~」いよいよイケない。だんだんモチベーションが低下していき「薬師までいけば良いか・・・・」などと思ってしまう。そのうちにまた何時しか眠ったようだ。
次に気が付いたのは4時すぎだった。今度は温度も見る。「14度・・・-14度?うー寒い。」この時計の温度計、カタログでは-10度までしか測れないはず。どこまで正確だか判らないが、外はもっと寒いと言うことか。地蔵まで行くならもう起きなければ思いつつ、どうしても体が動かない、シュラフから抜け出せない。
グズグズしているうちに、また眠り込んだようだ。気が付くと明るくなっていた。「しまった!!!」と思いつつも、なんとなく半分は予定の行動。言い訳になる既成事実を積み上げているような物で、あっさりと地蔵は諦めてしまう。そうなると慌てる気も失せて、グズグズと起きだした。
猛烈に寒い、ストーブに火をつけ暖を採る。今朝のメニューは、昨日の鍋の残り汁でうどん。しっかりと凍ってしまった残り汁に、まだ暖かい湯たんぽの水を入れてのばし、火にかける。うどんも野菜もカチカチに凍っている。煮えるのを待ちながらつらつらと「この分では観音も無理かな~」などと考えている自分かいる。

それでも気を引き締め準備をして、テントを出たのは既に9時過ぎ。南御室小屋からは展望が利かない。空を見上げると青空が広がっていて、気が晴れた。順調なら観音岳までは行けそうだが、小屋脇からの上り口を見ると、昨日小屋番さんがつけたトレースは、既に綺麗に消えていた。昨日の話が蘇る。「砂払いまで3時間か~」とりあえず1時まで、行けるところまで行って帰ってこようと決めて歩き出した。
しかし、のっけから深雪のラッセル、特に上り口の辺りは雪が吹き溜まって、腰までもぐる。小屋の屋根が見えるところまで登るだけで息が荒くなり大汗をかいた。
樹林帯に入るとトレースが復活したが、ワカンのトレースにつき、坪足ではやはりもぐる。「ハァハァ、フゥフゥ」さほどの急登と言うわけではないが、昨日に比べれば急な登りが続く。空を見上げると青空だが、時折白い雲が流れた。尾根の東側を歩いているため、肝心の西側の景色は望めない。早く見たくて気があせる。荷は軽いのだが、それでも思ったようには前に進まない。一時間ほど歩いたところで休みを取り、ニ度三度深呼吸をして気を静め「あせっても仕方がないぞ」自分に言い聞かせた。少しピッチを落として歩き出して、なんとなくリズムを掴んだようだ。先ほどよりは楽に足が出る気がする。場所によってすね辺り、吹き溜まりで膝上程度のラッセルが続く。周囲の木低くなってきた。だいぶ高度を稼いだが、それでもまだ西側は見えない。もう一度休みを取り、水分を補給した。暖かいお茶が美味しい。

f0076683_1834135.jpg10分ほど休んで再び歩き出す。
風の唸り声が大きくなり、視野に空の割合が増えてきた。まだ尾根の東側にいるため風は強くないが、森林限界が近いことを感じさせる。
ひときわ傾斜がきつくなり「よいしょ!!」と登ると、突然周囲が開け尾根上に顔が出た。とその瞬間、突風に巻き上げられた雪が目を直撃し、前が見えなくなると同時に強い風圧を感じた。これはいけない、堪らず頭を引っ込め、少し後退して体制を整える。ゴーグルを取り出し、フードを被って、アウターのジッパーをしっかりと引き上げた。
f0076683_18345063.jpg改めて、今度は慎重に頭を出す。一歩ごとに風当たりが強くなり、舞い上がった雪がパラパラと音を立てて体に当たる。視界が開け周囲を見渡した。
「ウーン」一番見たかった白峰三山は雪雲の中に隠れて見えない。上空は晴れているが、山にまとわり付くように雲が覆っている。突っ立っていると、突風に煽られ体が揺れ、寒さが身に沁みた。とりあえず岩陰に退避して景色を眺める。南には富士、逆光で霞んでいるが大きく見えている。北は砂払が視界を塞ぐが、大石が積み重なり雄雄しい。東は甲府の盆地から遠く秩父の山々だろうか、広々と見渡せた。
f0076683_1835916.jpg西の山々が見えないのは残念だが、それでも悪くはない。改めて見れば、いや、なかなか良い景色だ。気を取り直し、先へ進む。小さなピークを乗越少し下る。そこから砂払のピークまで一登りだが、風が強い。特に尾根の西側に出ると直立していられない。耐風姿勢をとるほどではないが、心持体を風上に傾けながら歩く感じになる。雪は風に飛ばされてほとんど無い、むき出しになった岩の間を登っていく。登りつめると眼前に薬師岳の岩峰が雪煙を巻き上げ聳えていた。ほぼ正午、ここまで2時間40分ほど掛かったことになる。

ちょっとゆっくりして景色を楽しみたいが、風が強くてそれどころではない。カメラを出す気にもなれない。
早々に先に進む。薬師小屋への下りは、程なく尾根の東側に移り、風当たりはグッと少なくなった。ちょっとホットしたのも束の間、今度は雪が大量に吹き溜まっている。表面は風に均され平坦だが、その下は多分相当に凹凸が有るのだろう。トレースは微妙な凹として見分けられ、それをたどるが、踝ぐらいまでしか沈まないと思って歩いていると、突然胸まで埋まってしまう。そうなると雪に溺れる感じで、這い上がるのに一苦労する。やっと抜け出して歩いているとまたはまり込む。
f0076683_18355224.jpg薬師小屋までもうあと一息という所、4度目か5度目か、また嵌まり込んだ。動く気がしない。時計を見る、12時20分。薬師岳は目の前だが、1時までには到達できそうにない。薬師小屋はすぐそこだが、そこへ行って何の意味が有る?そう思うと帰りの苦労が目に見えて、前に進む気が失せた。
少し時間は早いが、行動打ち切りを決めた。埋まったままでは具合が悪いので、足踏みをして穴を広げそこに座り込む。風を防げて居心地が良い。テルモスのお茶を飲み、パンを食べながら、「どうしてこうなったか・・・」と言う思いが頭をよぎる。理由はいろいろ有るだろう、ワカンを置いてきたこと、朝寝坊、etc.etc・・・・・。反省点はいろいろ有るが、でも、何故か結構満足している自分もそこにいて、これが実力と納得していた。

写真なども撮り、30分もそこで過ごしただろうか、一時少し前、薬師岳の姿を目に焼き付けて、先ほど来た道を登り返す。この登りも大変だった。先ほどさほど沈み込まなかった場所も、上り返しではきついラッセルになり漸く砂払のピークに戻る。再び強烈な風帯を横切って、風から逃げるように一気に樹林帯まで下ってしまった。そこで一息入れた後、南御室小屋へこれも一気の下り。途中、2人とすれ違ったが、一人は大きなカメラを持っているのだろう。大きく重そうな荷物を担ぎ、ゆっくりゆっくりと登って来るのが印象的だった。
南御室小屋に戻ったのは2時半少し前、出かける時には無かったテントが2張増え、小屋泊まりの人も何人か登ってきているようだ。
小屋の片隅に座ってお茶を飲みながら、そうした人達の話し声に耳を傾けているのも悪くない。
昨夜は貸切独占状態だったが、今夜は少し賑やかになりそうで、心強いような、でもちょっと残念のような、複雑な心境ではある。
(三日目に続く)
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by zukunasi_7 | 2007-02-22 18:39 |
2007年 02月 21日

冬の鳳凰山(前編)

さて、大分時間が経ってしまい、新鮮さには欠けるが、昨年末の鳳凰三山をレポートする。
2006年を締めくくるのに何所へ登ろうか、大変に迷った。
自分の技術・体力で、安全に登り降りてこられ、且つ多少のチャレンジを伴い充実した山行のできるところ、と言うと選択肢は限られる。
雪混じりの岩嶺が続くようなところは所詮無理だし、あまりアプローチが長いものも困る。
そこで浮上したのが鳳凰三山、まあ無難な選択と言えるだろう。

12月28日(一日目)
一昨日の季節外れの大雨、家の周りには雪のかけらも無い。午前4時すぎ、まだ暗い中、車を出す。
韮崎に着く頃には、だいぶ明るくなってきていた。途中コンビニにより、腹ごしらえと昼の食料を仕入れ、夜叉神峠に向かう。
温泉街を通り過ぎ、うねうねと曲がる道を登る。この頃にはもうヘッドライトは不要になっていた。だいぶ高度を上げたが、相変わらず雪は見えない。
f0076683_19444099.jpg丁度日の出の頃、漸くという感じで夜叉神の森の登山口へ、道脇の駐車スペースには2・3台の車しかいなかった。東屋のある登り口の真正面に車を止め、装備をおろす。空を見上げると白く濁り、そこに朝日が射して光線が見えていた。天気図は冬型に移行中で、北のほうは荒れそうだ。「南アで正解かな・・」と一人ごちながら準備をする。周囲にも上のほうにも雪が見えないので、ワカンを持つかどうか迷ったが、ザックの重さに負けて、結局ワカンは置いていくことにし、その重いザックを担ぎ上げた。

道路を渡り、階段を数段登って東屋の横へ、それだけで荷の重さに気が滅入る。いつもそうだが、歩き始めは、入山の高揚感と同時に、これからの長い登りを思うと憂鬱になる。「よし!行くぞ!」気合を入れなおし、7時20分改めて一歩を踏み出した。
最初少し急だが、それもすぐに緩やかになり、葉の落ちた明るい雑木林の中を大きく斜行し、うんざりした頃折り返してまた斜行しながら、だらだらとした登りがつづく。良く整備されて歩きやすいが、折り返しに「夜叉神峠まで後20分」などと標識が出ているのが気に入らない。「さっきは30分だったのに・・・あれから10分しか歩いていないの?」といった感じで、元気が出るより疲労感が増す。雪は見えず、普段は歩き出しから雪という場合が多いので、冬山に来ている気がしない。陽射しはあるがあまり天気はスッキリせず、時折遠くでゴーっと風の通る不穏な音が聞こえる。
それでも淡々と登りつめて一時間ほどで峠に到達、立ち止まらず右に折れて、尾根をたどり夜叉神小屋へ向かう。そこから一登りで8時半小屋の前に出た。

f0076683_19451430.jpg先ほどまで時折あった陽射しも今は無く、空はどんよりと灰色に沈んでいる。見えるはずの白峰三山は全く見えない。さほど強くは無いが、それでも西から冷たい風が吹き付けてくる。小屋は開いていず、風下に廻ってザックを降ろし一息入れた。テルモスのお茶を飲みパンをかじりながら、天気図を頭に描いてみる。下界の天気予報は晴れだったが、思ったより冬型が強いのだろう。15分ほど休んで腰を上げた。
ここから少し下る。雪は無いが、水溜りが凍っていて嫌らしいところを注意しながら歩く、程なく最鞍部を通過し再びだらだらとした登りがつづく。視界はほとんど無く、たまに開けても天気のせいで遠望は利かない。
2000mあたりで休みを入れた。ここまで来ても雪が無いことに拍子抜けと言うか、少しガッカリする。
f0076683_1946134.jpg道はたまに凍っている部分もあるが、歩行に支障は無く、いつの間にか雑木林から松林に変わった樹林帯の中を、相変わらずだらだらと登っていく。夏ならばそれでも花などを見ながら気分を紛らわせるが、今は薄暗い樹林の中なんの彩もない。
ただ黙々と歩くうち、10時40分、杖立峠に到着。しかし何の展望も無いのでそのまま通り過ぎた。
ここでも少し下りが入る。日影になっているせいか、道が凍っていて少し歩きにくい。滑らぬように注意しながら慎重に下り、しばらくゆるい登り下りを繰り返したところで11時頃、一休み入れた。
ここまではまずまず順調なペースで来ている。雪は・・・それでも時折まぶした様に白い物が見られるようになってきたが、雪歩きの感触は全く味わえていない。

ここでも15分ほどの休みを取り、再び歩き出す。道は徐々に凍っている部分が増え、いつの間にか、凍っていないところを探すのに苦労するようになっていた。圧雪の上に水が流れ、つるつるテカテカに凍っている。振り返ると先の程の杖立峠が随分と下に見えるようになり、周りには雪が目立ち始めた。気をつけて拾い歩きしていたが、諦めてアイゼンを出す。
2200m付近からだろうか、急に雪が増え始め、いくらも歩かぬうちに一面の雪世界に変わった。f0076683_19475048.jpg登山道も凍った道に雪をまぶした程度から、踝が埋まり、すねが隠れるような積雪になっていた。先日の大雨はこの辺りで雪に変わったのだろう、相当な積雪だ。それでも樹林帯の中は踏み跡があったが、山火事跡といわれる開けた場所に出たとたん、トレースが消え膝上の雪になる。しかも、強い風と雪が襲ってきた。少し風の無いところへ後退し、先ほど履いたばかりのアイゼンを外し、アウターを着て風と雪に備える。ここへ来て、ワカンを置いてきたことを激しく悔いたが、今はもう仕様が無い。ついでに暖かいお茶を飲み、パンをかじってエネルギーを補給する。

f0076683_19465046.jpg天気が良ければ素晴らしい展望が望めるらしいが、近くの山が霞んで見えるだけ。覚悟をして歩き始めてみると、風は強いが降雪はさほどではない。やっと雪山らしくなってきたことで、気分は上々。雪も少し重いが均質で、沈み方が一定していて、踏み抜きなどでバランスを崩すことが無いので、割合と歩きやすいように感じる。それでも膝上のラッセルはキツイ、なかなかはかどらない。漸く開けた山火事跡を抜け、再び樹林帯に入ると風も治まり、トレースが復活した。ホット一息入れていると、そこへ上から一人降りてきた。
「こんちは、どうも・・・」情報を仕入れる。「ワカン持ってます?」「イヤ~車に置いて来ちゃったんです。」「私もワカン無しで、今朝砂払いまで行ったんだけど、3時間もかかって、時間切れで降りてきました。」「そうですか・・・・・・」アア先が思いやられる、既に敗退の予感。
結局、この日出会ったのはこの人と、あとは南御室の管理人さんだけだった。
その後も苦闘は続き、苺平に14時、そこで一休みして、後は少し下って南御室小屋に15時少し前に到着した。

小屋に着いてみると、誰もいない。小屋の前は雪かきされているが、人の気配は無かった。
とりあえずザックを下ろし、テントの張り場所を物色する。張り跡は一つもない。積雪は1mから1.5mほどだろうか、表面は最中状に固まっているが、歩くと時折踏み抜いて、腿まで埋まってしまう。風の無さそうなところを選んで下地を作る。踏んでもさらさらした雪で固まらず、綺麗には整地できそうにない。適当なところで切り上げて、テントを張った。荷物を放り込みホッとしていると、そこへ小屋番さんが降りてきた。ワカンを履いてトレースを付けに行っていたようだ。小屋は営業していないが、テントの受付をする。2泊で申し込むと、明日からの営業なので今日の分はただにしてくれた。
f0076683_19481665.jpgそうこうしているうちに周囲がだいぶ暗くなり、冷え込んできた。風の音がゴーっと唸っているが、テントの周りはさほど風を感じない。見上げると鉛色だった空がいつの間にか晴れている。「うーん、寒くなりそうだ。」テントの中にもぐりこんだ。
(二日目に続く)
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by zukunasi_7 | 2007-02-21 19:58 |