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ずくなしの気ままに 花・山

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2006年 09月 01日

山への誘い。

最近、このブログで山行記をUPしたり、あるいは、皆さんのHPを訪問し山の写真を貼ったりすると、必ず「いいですね~私も行ってみたい・・・・・・」という反応がある。
しかし、その後に「でも・・・・」という言葉がつく、あるいは感じることがある。「でも・・・年だから・体力が無いから・危なそうだから・・・行ってみたいけど・・・・」明確にそう仰られることも有れば、言外に匂わされる方も少なくない。
年齢や体力を理由に登山に尻込みしている、そうした方に「是非、山に行きましょう。」日本アルプスなんて夢のまた夢?「いえいえ、そんなことは有りません。山はいいよ。」というお話。
山への誘い。_f0076683_3325628.jpg
僕が山を始めたのはつい最近、忘れもしない2004年6月4日、蝶ヶ岳へ登ったことに始まる。
もっともごく若い頃、中学の後半から大学生に掛けて、そのころ住んでいた神奈川県の丹沢を中心に、両親の故郷である信州の北アルプスへも登っていた経験はある。
しかし社会人になって以来30年、登山はしていなかった。その間、上高地や千畳敷の散策、ドライブがてらの高原散策、山菜採りやキノコ採り程度、またスポーツも30代中ごろまでのスキーやへっぽこゴルフ程度で、体力的に登山は到底無理だろうと思っていた。仕事はデスクワーク中心、田舎のこととて車移動主体、都会の電車通勤族に比べたら全く歩かない。体重は肥満までは行かないが、相当なオーバーで、動きも軽快とは言えず、大きな疾病疾患は無いが・・・という、まあごく平均的な中高年だろう。
山への誘い。_f0076683_3332373.jpg
そんな自分がある日突然、山へ登りたい衝動に駆られたのだが。
伏線は、花や風景の写真を撮るため、ある程度頻繁に野山へ出かけるようになっていたこと、そしてインターネットなどで、山の写真を頻繁に見るようになり、昔登った山の記憶を呼び覚まされたこと、などだろう。
直接の要因はその前週、花の写真を撮るため、一の沢の常念への登山道を結構奥深くまで遡り、山道の感触を味わったことだった。そのまま登って行きたい、登り詰めてみたいなぁと、決して強くでは無いが、そんな思いが芽生えた。家に戻り一晩二晩、日を経るごとにその思いは強くなり、6月3日、裏庭からアルプスを眺め、よし行こう、明日登ろう、心が決まっていた。

準備は?・・・それは今から思うと、とても心もとない。
蝶ヶ岳にした理由は、槍穂高の眺望が素晴らしいこと、アプローチしやすいこと、日帰りが可能であること、常念よりちょっと低いこと。
インターネットで登攀記をあさり、地図をダウンロードして印刷し、装備は撮影に出かける祭のカメラザックに雨具、靴はやはり撮影時に履いていた安いトレッキングシューズ、服はジーンズと普段着のポロシャツ。
今であれば、そんな準備やいでたちでは、絶対に山へは行かない。行ってはいけない。
しかし、その時の山へ行きたい気持はそれ程強かった。

そして当日、暗いうちに家を出、ワクワクしながら登山口へ向かった。
山行記ではないので詳しくは書かない。
歩き始めは、前途洋洋気分爽快、足取りも軽かった。しかし、時間にしたら2~30分程度だったと思う。その後少し傾斜がきつくなると、心臓がバクバクして呼吸が苦しい。行程1/3ぐらいのところに「まめうち平」があり、その手前に急な登りがあるが、そこで足がというか全身がきつくなる。やっとのことでまめうち平に着いたときは、少々後悔をし始めた。しかし本当に苦しかったのはそれからだった。一歩足を進めるごとに、「何でこんなことを始めてしまったか。」「止めときゃ良かった。」「もう帰ろうか。」そんな思いの連続だった。
しかし、そんな思いをしながら何とか登り詰めた頂上は、すべてを吹き飛ばした。とても苦しかっただけに達成感・充実感もひとしおだったが、何より眼前に広がる景色の素晴らしさ、とても言葉で言い表せる物ではない。多分一生、この経験その山の表情は忘れないだろう。
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だが、このお話は、山は素晴らしいよ、今特別な体力が無くても山に登れるよ、という程度の事であって「何でもいいから山に行っちゃいなさい。」という事では決して無い。
むしろ、絶対にまねをしてはいけない。途中には雪も結構あった。昔の経験が有ったから登れたが、逆に言えばその中途半端な経験が登らせてしまった。今から考えれば、途中で引き返すことが真っ当な判断だったと思う。貧弱な準備で登山を始め、貧弱な体力・装備で登り続けたことは、一歩間違えば、今流行の中高年登山者の遭難に繋がるところだった。降りてきた時の疲労の度合いを考えれば、そうならなかったのは運が良かったに過ぎない。実際ふらふらで意識も朦朧としていた。車で3時間ほど眠らなければ運転も出来なかった。そして翌日から3・4日、筋肉痛で歩けなかった。

しかし、最初はそのていたらくであった体も、その後も登山を続けることで、一日10時間くらいの行動は問題なくできるし、筋肉痛もほとんど気にならないレベルになってきている。先般の登山、いろいろときついことも有ったが、この最初の登山とは比較にならない。
つまり、中高年と言われる年になり、現状は多少体力に自信が無くても、ちゃんとした準備をすれば、日本アルプスも問題なく登れるようになるということだ。

その準備とは、
上高地なら、大正池から徳沢まで行ってバスセンターまで、あるいは関東なら高尾山辺りの登山、これを2・3回程度。次に、丹沢山塊の大山辺りにケーブルを使って1回、使わずに1回、そして塔ノ岳クラスへ2回程度。
これをあまり間を開けずに、月2回程度のペースで登れば、つまり3ヶ月ほどの準備をすれば、蝶ヶ岳や燕岳なら全く問題なく登れると思う。

ただし、山の難易度は高さだけではない。岩稜歩きや鎖場など、多少恐い思いをする場面も有る。全くの未経験者であれば行かないほうが良いことも少なくない。そう言うことはガイドブックや登山地図だけではわからないことも多い。経験者に聞くか、できるなら同行、連れて行ってもらうのが一番良い。回りに経験者がいなければ、このブログにもリンクして有るが、山岳会のホームページの掲示板などに、自分の経験値などを明記した上で質問してみると良いだろう。
僕自身、登山再開からの短い間に、やばいと思うような体験が他にも有る。昔の経験がそれなりに役に立っている反面、その経験が、現状の自分には多少荷の重い登山をさせている面も否めない。正直なところ、このままエスカレートしていくのが恐くなってきた。そのことが山の会に入る動機になった。
全くの未体験者ならごく慎重に。過去の経験者は、その中断の期間にも寄るが、さらにさらに慎重に。それが今の僕に言えることだ。

いずれにしても、現に疾病状態にあるとか、足腰に故障を抱えているとかであれば、それは残念ながら無理であろう。しかし、体力に自信が無いということなら、多少の準備を厭わなければ、山を諦める理由は無いと思う。

この文が、山へ行きたいけど、小さな不安が有って行けないでいる人への応援になれば良いのだが。

by zukunasi_7 | 2006-09-01 03:38 |


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